UFCでは、選手が階級を変更したことで、それまでとはまったく違うキャリアを歩み始めることがあります。
下の階級へ体重を落とし、階級内での体格やパワーを生かす選手。
反対に、厳しい減量をやめて上の階級へ移り、スタミナ、耐久力、集中力、本来のパワーを取り戻す選手。
上の階級でも、以前の階級で培ったスピードや技術を武器に王者となる選手もいます。
階級変更の成功例としては、二階級制覇を達成した選手が注目されがちです。
しかし、階級変更の価値は王座獲得だけでは判断できません。
新しい階級でタイトルへ挑戦した選手、連敗から復活した選手、減量への負担を減らして長期間トップ戦線で戦えるようになった選手も、階級変更に成功したと考えることができます。
この記事では、UFCで階級を変更し、キャリア上の大きな成果を得た10人を紹介します。
単なる二階級王者の一覧ではなく、
- なぜ階級を変更したのか
- 身長や体格は新しい階級に合っていたのか
- 減量負担の軽減が影響したのか
- 上の階級でスピードや技術を生かせたのか
- 下の階級で本来の適性を発揮したのか
- 階級変更に定着できなかった選手と何が違ったのか
という点から考察します。
大幅減量と適正階級については、以下の記事でも詳しく扱っています。
大幅減量で小さい相手と戦うのは卑怯?MMAの「ウェイト・ブリー」論争を考える
結論:最も軽くできる階級が、最も強く戦える階級とは限らない
最初に結論を述べます。
選手にとって最も適した階級は、限界まで減量すれば到達できる階級ではなく、試合当日に最も高い能力を発揮できる階級です。
下の階級へ移れば、対戦相手に対して身長、リーチ、筋肉量、組みの強さなどで優位に立てる可能性があります。
一方で、減量によってスタミナ、反応、集中力、耐久力、トレーニングの質を失えば、体格差を作った意味がなくなることもあります。
上の階級へ移れば減量負担は減りますが、対戦相手の打撃力やフィジカルは強くなります。
それでも、本来の身体機能を保った状態で戦えることが、サイズ差以上の利点になる選手もいます。
ロバート・ウィテカー、ダスティン・ポイエー、アンソニー・ジョンソンなどは、下の階級で苦しんだ後、上の階級でキャリアを大きく向上させました。
反対に、デメトリアス・ジョンソンやヴァレンティーナ・シェフチェンコは、自分の体格により適した下の階級が用意されたことで、歴史的な王者となりました。
階級変更の成功を考える際は、
上げた方がよいのか、下げた方がよいのか
という単純な二択ではなく、
その選手の体格、技術、年齢、減量負担、対戦相手との相性に合っているか
を見る必要があります。
この記事における「階級変更の成功」の定義
本記事では、次のいずれかに該当する選手を「階級変更に成功した選手」とします。
- 新しい階級でUFC王座または暫定王座を獲得した
- 新しい階級でタイトルに挑戦した
- 上位ランカーとして定着した
- 変更前より明らかに成績が改善した
- 連敗や停滞からキャリアを再浮上させた
- 新しい階級で長期間トップレベルを維持した
したがって、二階級制覇を達成していない選手も対象に含めます。
また、原則として新しい階級で複数試合を行った選手を対象としますが、一度の階級変更でも王座獲得などの明確な成果を挙げた場合は成功例として扱います。
身長はUFC公式プロフィールのインチ表記をセンチメートルへ換算し、四捨五入しています。
UFCで階級変更に成功した選手10人の比較
| 選手 | 身長 | 階級変更 | 変更後の主な成果 | 主な成功要因 |
|---|---|---|---|---|
| ロバート・ウィテカー | 183cm | ウェルター級→ミドル級 | UFCミドル級王者 | 減量負担の軽減・身体機能 |
| ダスティン・ポイエー | 175cm | フェザー級→ライト級 | UFCライト級暫定王者 | パワー・耐久力・練習の質 |
| チャールズ・オリベイラ | 178cm | フェザー級→ライト級 | UFCライト級王者 | 減量安定・技術・耐久力 |
| アンソニー・ジョンソン | 188cm | ウェルター級など→ライトヘビー級 | UFC王座へ2度挑戦 | 本来のパワー・爆発力 |
| アレックス・ペレイラ | 194cm | ミドル級→ライトヘビー級 | UFCライトヘビー級王者 | 減量軽減・打撃・スピード |
| ヘンリー・セフード | 163cm | フライ級→バンタム級 | UFCバンタム級王者 | レスリング・速度・対応力 |
| アンソニー・スミス | 193cm | ミドル級→ライトヘビー級 | UFC王座挑戦 | 減量軽減・耐久力・適性 |
| デメトリアス・ジョンソン | 160cm | バンタム級→フライ級 | UFC初代王者・11度防衛 | 体格適性・速度・総合力 |
| ヴァレンティーナ・シェフチェンコ | 165cm | 女子バンタム級→女子フライ級 | UFC女子フライ級王者 | 体格適性・技術・機動力 |
| ジャレッド・キャノニア | 180cm | ヘビー級→ライトヘビー級→ミドル級 | UFCミドル級王座挑戦 | 体組成・パワー維持・速度 |
減量苦や身体への負担を減らし、上の階級で成功した選手
1.ロバート・ウィテカー
- 身長:183cm
- 階級変更:ウェルター級からミドル級
- 変更後の実績:UFCミドル級王者
ロバート・ウィテカーは、UFCで最初の5試合をウェルター級で戦いました。
ウェルター級での戦績は3勝2敗でしたが、2014年にミドル級へ変更します。
本人は、ウェルター級への減量が身体から多くのものを奪っていたため、ミドル級へ移ったことは非常に良い判断だったと説明しています。
ウィテカーは別のUFCインタビューでも、ミドル級へ移ったことで減量のストレスが減り、体重を落とす作業ではなく、戦うための練習へ時間を使えるようになったと語っています。
ミドル級転向後は連勝を重ね、ヨエル・ロメロを破って暫定王座を獲得。その後、正規のUFCミドル級王者となりました。
ウェルター級では有望選手の一人だったウィテカーが、ミドル級では世界王者となったことから、減量幅を小さくすることが必ずしも体格的な不利だけを生むわけではないと分かります。
減量による消耗を抑えたことで、
- スタミナ
- 打撃のスピード
- テイクダウンディフェンス
- 耐久力
- 練習の質
を維持できた可能性があります。
ただし、成功のすべてを減量軽減だけで説明することはできません。
ミドル級へ移った時期に、食生活、トレーニング環境、戦術面にも変化があったと本人は説明しています。
なお、ウィテカーは2026年にさらにライトヘビー級へ移り、初戦でニキータ・クリロフに勝利しています。ただし、ライトヘビー級での成功については、まだ試合数が少ないため今後の評価が必要です。
階級変更の理由を確認できる記事
Whittaker Expects An Explosive Fight(UFC)
Changes Bring out the Best in Whittaker(UFC)
2.ダスティン・ポイエー
- 身長:175cm
- 階級変更:フェザー級からライト級
- 変更後の実績:UFCライト級暫定王者
ダスティン・ポイエーは、フェザー級でも上位戦線で戦っていました。
しかし、145ポンドまで体重を落とす作業は、試合の準備そのものへ悪影響を与えていました。
ポイエーは階級変更について、減量によって試合の準備を嫌いになるほど苦しみ、対戦相手にどう勝つかではなく、どうやって体重を作るかに意識を奪われていたと説明しています。
ライト級へ戻った後は、
- エディ・アルバレス
- ジャスティン・ゲイジー
- マックス・ホロウェイ
- コナー・マクレガー
- マイケル・チャンドラー
などの強豪に勝利しました。
マックス・ホロウェイを破ってUFCライト級暫定王座も獲得しています。
ポイエーの成功は、体格差を作ること以上に、十分に食事を取り、対戦相手の分析や技術練習へ集中できることが重要であると示しています。
ライト級ではフェザー級時代より大きな選手と戦うことになりましたが、ポイエー自身のパンチ力、耐久力、連打、近距離での攻防も、より安定して発揮されるようになりました。
体重計との戦いを減らすことで、本来の対戦相手との戦いに集中できるようになった
という階級変更の代表例です。
階級変更の理由を確認できる記事
Dustin Poirier explains why he’s returning to lightweight(MMA Fighting)
3.チャールズ・オリベイラ
- 身長:178cm
- 階級変更:フェザー級からライト級
- 変更後の実績:UFCライト級王者
チャールズ・オリベイラは、UFC参戦当初はライト級で戦っていましたが、その後フェザー級へ移りました。
フェザー級では勝利を重ねた一方、複数回の計量失敗も経験しています。
特にリカルド・ラマス戦では、フェザー級の上限を大幅に超過しました。その後、2017年にライト級へ戻っています。
ライト級復帰後、オリベイラは最初の13試合で12勝を挙げ、マイケル・チャンドラーを破ってUFCライト級王者となりました。
ライト級では、
- サブミッション技術
- 打撃の攻撃力
- 前へ出る圧力
- ダメージを受けた後の回復力
- 長い手足
を生かし、フェザー級時代以上の成功を収めました。
フェザー級では体格面の優位性があった可能性がありますが、計量を安定してクリアできなければ、その優位性を継続的に利用することはできません。
オリベイラは、下の階級で無理に身体を小さくするより、技術と攻撃力を安定して発揮できる階級の方が強かった例といえます。
ただし、ライト級へ戻った後も、UFC 274でタイトル戦の規定体重を0.5ポンド超過し、王座を失っています。
したがって、
ライト級へ上げたことで、すべての体重管理問題が完全に解決した
とは断定できません。
階級変更の経緯を確認できる記事
From Featherweight To Lightweight: Fighters Who Thrived Moving Up(UFC)
For Charles Oliveira, Nothing Beats Experience(UFC)
4.アンソニー・“ランブル”・ジョンソン
- 身長:188cm
- 階級変更:ウェルター級・ミドル級からライトヘビー級
- 変更後の実績:UFCライトヘビー級王座へ2度挑戦
アンソニー・ジョンソンは、階級変更によって本来の能力を発揮した最も極端な例の一人です。
身長約188cmで、後にライトヘビー級のトップ選手となったジョンソンは、UFCキャリア初期にウェルター級で戦っていました。
ウェルター級の上限は170ポンド、約77.1kgです。
ジョンソンはウェルター級で何度も計量に苦しみ、最終的にミドル級へ移りました。しかし、ミドル級初戦でも規定体重を大幅に超過しています。
一度UFCを離れた後、ライトヘビー級を主戦場として復帰すると、ジョンソンは別人のような強さを見せました。
アレクサンダー・グスタフソン、グローバー・テイシェイラ、ライアン・ベイダーなどをKOし、UFCライトヘビー級王座へ2度挑戦しました。
ウェルター級では、
- 体重を落とすこと
- 脱水から回復すること
- 計量をクリアすること
自体が大きな戦いになっていました。
ライトヘビー級では体格面で特別大きな選手ではなくなりましたが、本来の爆発力、パンチ力、スピードを維持できるようになりました。
ジョンソンのキャリアは、
下の階級で身体を大きく見せることより、適切な階級で本来のパワーを出す方が強い場合がある
ことを示しています。
階級変更の経緯を確認できる記事
I Had No Choice But To Grow — Anthony Johnson(UFC)
The Blueprint – Belfort vs Johnson(UFC)
上の階級でスピード・技術を生かして成功した選手
5.アレックス・ペレイラ
- 身長:194cm
- 階級変更:ミドル級からライトヘビー級
- 変更後の実績:UFCライトヘビー級王者
アレックス・ペレイラは、UFCミドル級王者となった後、イスラエル・アデサニヤとの再戦に敗れてライトヘビー級へ移りました。
UFCの記事では、ペレイラがミドル級への減量負担が大きすぎると判断し、ライトヘビー級へ目標を移したと説明されています。
約194cmの身長と長いリーチを持つペレイラは、ミドル級でも非常に大きな選手でした。
ライトヘビー級へ上げると体格面の優位性は小さくなりましたが、ミドル級で戦っていた時のスピード、タイミング、打撃技術は上の階級でも大きな武器となりました。
ヤン・ブラホビッチに勝利した後、イリー・プロハースカをKOしてライトヘビー級王座を獲得しています。
ペレイラの場合、成功の理由は減量軽減だけではありません。
- キックボクシングで培った距離感
- 左フック
- カーフキック
- 相手の動きを読む能力
- ライトヘビー級としては高い打撃速度
が、上の階級でも通用しました。
下の階級から上げた選手は、フィジカルでは劣る可能性がある一方、スピードや運動量で優位に立つことがあります。
ペレイラは、その代表的な成功例です。
階級変更の経緯を確認できる記事
UFC Rankings Report – Week of November 7, 2023(UFC)
Alex Pereira’s Path to the History Books(UFC)
6.ヘンリー・セフード
- 身長:163cm
- 階級変更:フライ級からバンタム級
- 変更後の実績:UFCバンタム級王者
ヘンリー・セフードは、デメトリアス・ジョンソンを破ってUFCフライ級王者となりました。
その後、T.J.ディラショーを短時間で破ってフライ級王座を防衛すると、上のバンタム級王座を目指します。
マルロン・モラエスとの王座決定戦では、序盤に強烈なローキックを受けながら立て直し、3ラウンドTKO勝利でバンタム級王座を獲得しました。
これにより、セフードはUFCの二階級王者となっています。
約163cmのセフードは、バンタム級では小柄です。
しかし、
- オリンピック金メダル級のレスリング
- 爆発的な踏み込み
- 低い重心
- ハンドスピード
- クリンチでの圧力
を生かし、体格差を克服しました。
セフードの移動は、減量苦から逃れるためだけの変更ではありません。
フライ級王者としての実績を確立した後、二階級制覇によって自身の評価と歴史的地位を高めることが大きな目的でした。
王者になった後、より大きな実績や試合を求めて上の階級へ移る
という階級変更の代表例です。
階級変更の経緯を確認できる記事
The Making of Henry Cejudo(UFC)
A History of Two-Division Champions, Part 2(UFC)
7.アンソニー・スミス
- 身長:193cm
- 階級変更:ミドル級からライトヘビー級
- 変更後の実績:UFCライトヘビー級王座挑戦
アンソニー・スミスは、ミドル級では勝敗を繰り返し、階級のトップ戦線へ進めずにいました。
身長約193cmの長身でありながら、ミドル級の上限である185ポンドまで体重を落としていました。
2018年にライトヘビー級へ移ると、ラシャド・エバンス、マウリシオ・“ショーグン”・フア、ヴォルカン・オーズデミアを連続でフィニッシュします。
その後、ジョン・ジョーンズのUFCライトヘビー級王座へ挑戦しました。
スミスは二階級王者ではありません。
しかし、ミドル級で長期間トップへ届かなかった選手が、ライトヘビー級へ移って短期間で王座挑戦まで進んだことから、キャリア再生の成功例として適しています。
体重を落としすぎないことで、
- 耐久力
- 攻撃力
- 回復力
- 精神的な余裕
が改善した可能性があります。
一方で、ライトヘビー級後半のキャリアでは勝敗を繰り返したため、階級変更によって無条件に強くなったわけではありません。
それでも、ミドル級時代より高い位置まで進んだ点では、変更は成功だったと評価できます。
階級変更の経緯を確認できる記事
The Rise of Anthony Smith(UFC)
Stockholm Super Six: Anthony Smith(UFC)
下の階級で本来の体格・能力を生かして成功した選手
8.デメトリアス・ジョンソン
- 身長:160cm
- 階級変更:バンタム級からフライ級
- 変更後の実績:初代UFCフライ級王者・11度の連続防衛
デメトリアス・ジョンソンは、UFCにフライ級が存在しなかった時代、バンタム級で戦っていました。
約160cmのジョンソンは、バンタム級の中では非常に小柄でした。
それでもミゲル・トーレスらに勝利し、ドミニク・クルーズのバンタム級王座にも挑戦しています。
2012年にUFCがフライ級を新設すると、ジョンソンは125ポンドへ移りました。
フライ級王座決定トーナメントを勝ち上がり、ジョセフ・ベナビデスを破ってUFC初代フライ級王者となります。
その後、UFC記録となる11度の連続王座防衛を達成しました。
ジョンソンの場合、下の階級へ移った理由を、
小さい対戦相手と戦うため
と考えるのは適切ではありません。
自分の身長や骨格に合う階級が、それまでUFCに存在していなかったからです。
フライ級では、
- 圧倒的なスピード
- 連続したテイクダウン
- 打撃と組みの切り替え
- 長時間動き続けるスタミナ
- 試合中の判断力
を最大限に発揮しました。
適正階級が用意されたことで、優秀な選手から歴史的王者へ変わった代表例です。
階級変更の経緯を確認できる記事
Johnson Makes History, Wins First UFC Flyweight Title(UFC)
9.ヴァレンティーナ・シェフチェンコ
- 身長:165cm
- 階級変更:女子バンタム級から女子フライ級
- 変更後の実績:UFC女子フライ級王者
ヴァレンティーナ・シェフチェンコは、UFC参戦当初、女子バンタム級で戦っていました。
ホリー・ホルムやジュリアナ・ペーニャに勝利し、アマンダ・ヌネスの女子バンタム級王座にも挑戦しています。
その後、UFC女子フライ級が新設されると、125ポンドへ移りました。
本人は、バンタム級では普段の体重に近い状態で戦っており、フライ級こそ自分の階級だったと説明しています。
フライ級移動後は、ヨアナ・イェンジェイチックを破って王座を獲得。
最初の王座在位中に7度の防衛を成功させました。
シェフチェンコは、バンタム級でも王座に迫るほどの実力を持っていました。
しかし、フライ級では対戦相手との体格差が小さくなり、
- 打撃技術
- 距離管理
- スピード
- カウンター
- テイクダウン
- 試合運び
という純粋な能力を、より安定して発揮できるようになりました。
下の階級へ移ったから成功したというより、自分の身体に近い階級が新設されたことで、本来の総合力が際立った例です。
階級変更の理由を確認できる記事
Not Time For Reflection, Shevchenko Still Has Plenty Of Big Moments To Come(UFC)
Valentina Shevchenko Sets The Standard(UFC)
10.ジャレッド・キャノニア
- 身長:180cm
- 階級変更:ヘビー級からライトヘビー級、さらにミドル級
- 変更後の実績:UFCミドル級王座挑戦
ジャレッド・キャノニアは、UFCでヘビー級、ライトヘビー級、ミドル級の3階級を経験しています。
UFCデビュー時はヘビー級でしたが、身長は約180cmであり、ヘビー級としては小柄でした。
その後ライトヘビー級へ移り、さらに身体を作り変えてミドル級へ下げています。
ミドル級初戦では、デビッド・ブランチをTKOで破りました。
その後もアンデウソン・シウバ、ジャック・ハーマンソン、デレク・ブランソンなどに勝利し、イスラエル・アデサニヤのUFCミドル級王座へ挑戦しています。
キャノニアは、体重を水分だけで急激に減らして下の階級へ移った例とは異なります。
長期間かけて体脂肪を落とし、身体構成そのものを変えながら階級を下げました。
その結果、
- ヘビー級時代から持っていたパンチ力
- ミドル級での機動力
- フィジカル
- 耐久力
を組み合わせることができました。
一般的には、上の階級へ移った方が減量負担が減り、パフォーマンスが改善すると考えられます。
しかし、キャノニアのように、余分な体重を減らし、適した身体構成を見つけることで下の階級で成功する選手もいます。
階級変更の経緯を確認できる記事
Anything Is Possible For Jared Cannonier(UFC)
The Best Of Jared Cannonier(UFC)
王者になると階級を上げやすくなるのか
ここからは、私の個人的な印象を含みます。
私は、厳しい減量を続けて一度王座を獲得した選手が、その実績を確立した後、比較的早い段階で上の階級へ移るケースが目立つように感じます。
一度チャンピオンになれば、その実績は後に階級を変更して敗れたとしても消えません。
そのため、
- 厳しい減量を続ける必要がなくなる
- 二階級制覇という新しい実績を狙える
- より大きな試合や報酬を得られる
- 同じ階級の挑戦者が少なくなる
- これまでとは異なる対戦相手と戦える
という理由から、上の階級へ挑戦しやすくなるのではないかと思います。
ヘンリー・セフードやアレックス・ペレイラは、元の階級でUFC王者となった後、上の階級でも王座を獲得しました。
一方、選手が階級を変更する理由は、減量がつらいからだけではありません。
- 対戦したい相手がいなくなった
- 二階級制覇を達成したい
- 自分の歴史的評価を高めたい
- 年齢とともに体重が落ちにくくなった
- より報酬の大きな試合を求めている
- 元の階級で王座を失い、新しい目標が必要になった
など、選手ごとに異なります。
したがって、
王者になった選手は減量が嫌になってすぐ階級を上げる
と一括りにすることはできません。
ただし、王座獲得が、これまで続けてきた厳しい減量を見直す一つの節目になる可能性はあると思います。
階級変更の経緯によって評価は変わる
階級変更後に同じ結果を残したとしても、そこへ至った経緯によって受け止められ方は変わります。
例えば、
- 計量失敗を繰り返して上げた
- 減量によって健康や練習へ影響が出た
- 王座を獲得して新しい挑戦を求めた
- 元の階級で連敗して変更した
- 自分に合う階級が新設された
- 上の階級で戦っていたが、身体を改善して下げた
という違いがあります。
ロバート・ウィテカーやダスティン・ポイエーは、減量負担を減らすことで能力を発揮した例です。
セフードやペレイラは、元の階級で王者となった後、さらなる実績を求めて上げた側面があります。
デメトリアス・ジョンソンとシェフチェンコは、自分に適した階級が新設されたことが大きな転機でした。
キャノニアは、減量苦から逃れるためではなく、身体構成を改善しながら下の階級へ移った例です。
単に、
上げた
下げた
という結果だけでなく、変更理由と身体の変化を見る必要があります。
新しい階級に定着できなかった例
階級変更は、必ず成功するわけではありません。
ただし、一試合や二試合の結果だけで、階級変更自体が完全な失敗だったと断定することにも注意が必要です。
コーディ・ガーブラント
元UFCバンタム級王者のコーディ・ガーブラントは、2021年にフライ級へ移りました。
しかし、フライ級初戦でカイ・カラ=フランスに1ラウンドTKO負けを喫し、その後はバンタム級へ戻っています。
下の階級でスピードやパワーの優位性を作る狙いがあっても、減量の影響や対戦相性によって期待どおりの結果にならない例です。
ルーク・ロックホールド
元UFCミドル級王者のルーク・ロックホールドは、減量負担を減らしてライトヘビー級へ移りました。
本人は、身体を消耗させずに戦えることへの期待を語っていました。
しかし、ライトヘビー級初戦でヤン・ブラホビッチにKO負けを喫し、新階級で継続的に戦うことはありませんでした。
この2人の例からも、
減量幅を変えれば自動的にパフォーマンスが改善する
わけではないことが分かります。
階級変更の成功と失敗を分ける要因
階級変更後の成績は、体重だけでは決まりません。
変更した時期と年齢
若い時期に階級を変更すれば、新しい身体や対戦相手へ適応する時間があります。
一方、長いキャリアの後半で変更した場合、減量負担は減っても、反応速度や耐久力の低下を補えないことがあります。
変更後の身体作り
単に水抜きの量を減らすだけではなく、新階級に合わせて筋力、持久力、食事、トレーニングを調整する必要があります。
上の階級へ移って急激に筋肉を増やせば、スピードやスタミナを失う可能性もあります。
技術が体格差を超えられるか
セフードやペレイラのように、上の階級でも通用する明確な武器を持っている選手は成功しやすくなります。
- レスリング
- 打撃の速度
- KOパワー
- 距離管理
- テイクダウンディフェンス
など、体格差を超えられる能力が必要です。
新しい階級の対戦相性
元の階級で苦手だったタイプが、新階級には少ない場合があります。
反対に、階級を変えたことで、これまで経験していなかった打撃力や組みの圧力に直面することもあります。
階級変更の目的が明確か
減量がつらいという理由だけでなく、
新しい階級でどのように勝つのか
という具体的な戦術が必要です。
ウィテカー、ポイエー、ペレイラなどは、新階級で自分の長所をどのように使うかが明確でした。
私がUFC選手の階級変更について感じること
私は、選手が厳しい減量に耐えて王者を目指す姿勢には、非常に強い執念を感じます。
一方で、一度王者になった後に階級を上げる選手を見ると、
これ以上、同じ苦しい減量を続けなくても、チャンピオンという実績は消えない
という心理も、決断を後押ししているのではないかと思うことがあります。
それは、減量から逃げたという否定的な意味ではありません。
すでに一つの階級で頂点を極めた選手が、身体への負担を減らし、新しい挑戦へ進むことは自然です。
また、減量が少ない階級へ移ったことで強くなる選手を見ると、
以前の階級で作っていた体格差は、本当にその選手に必要だったのか
という疑問も生まれます。
下の階級で身体を大きくすることが有利な選手もいます。
しかし、減量によって技術練習、スタミナ、集中力、耐久力を失っているなら、実際には自分の強さを削っている可能性があります。
反対に、デメトリアス・ジョンソンやヴァレンティーナ・シェフチェンコのように、下の階級で自分の体格に合う相手と戦うことで、純粋な技術を発揮できる選手もいます。
重要なのは、可能な限り軽い階級を選ぶことでも、楽に計量できる階級を選ぶことでもありません。
減量による負担と、新階級で背負う体格差のバランスが最もよい場所を選ぶこと
だと思います。
UFC選手の階級変更に関するよくある疑問
階級を上げるとスタミナは必ず改善する?
必ず改善するとは限りません。
減量負担が減れば、体力や集中力を保ちやすくなる可能性があります。
一方、筋肉や体重を増やしすぎれば、酸素消費量が増え、逆に動きが重くなる場合もあります。
下の階級へ移れば体格差で有利になる?
有利になる可能性はあります。
しかし、減量による脱水や栄養不足でパフォーマンスを失えば、体格面の利点を生かせません。
また、対戦相手も同じように減量している可能性があります。
一試合だけ上の階級で勝てば成功といえる?
一試合だけでは判断が難しいです。
王座獲得などの明確な成果があれば成功と評価できますが、通常は複数試合を見て、新階級で安定して能力を発揮できるかを確認する必要があります。
二階級王者以外も成功例に含まれる?
含まれます。
アンソニー・ジョンソンやアンソニー・スミスは二階級王者ではありませんが、階級変更後に王座挑戦まで到達しました。
階級変更前より成績や評価が向上したのであれば、成功例と考えられます。
適正階級は誰が決める?
最終的には選手本人が決断しますが、コーチ、栄養士、ストレングスコーチ、医師、マネジャーなどの意見も関係します。
最も軽くなれる階級ではなく、最も高い能力を発揮できる階級を選ぶことが重要です。
まとめ:階級変更は体重ではなく、選手の能力を作り直す決断
UFCでは、階級変更によってキャリアを大きく変えた選手がいます。
減量負担を減らして上の階級で成功した代表例は、
- ロバート・ウィテカー
- ダスティン・ポイエー
- チャールズ・オリベイラ
- アンソニー・ジョンソン
です。
上の階級でスピードや技術を生かして成功した選手には、
- アレックス・ペレイラ
- ヘンリー・セフード
- アンソニー・スミス
がいます。
自分の体格や身体構成に合う下の階級で成功した選手は、
- デメトリアス・ジョンソン
- ヴァレンティーナ・シェフチェンコ
- ジャレッド・キャノニア
です。
階級変更後の成功には、
- 減量負担
- 身長と骨格
- 筋肉量
- 年齢
- 技術
- スピード
- 対戦相性
- 身体作り
- 変更した時期
が複雑に関係しています。
私の結論は次のとおりです。
最も軽くなれる階級が、最も強く戦える階級とは限りません。重要なのは、試合当日に自分の技術、スタミナ、パワー、判断力を最も高い水準で発揮できる階級を選ぶことです。
階級変更は、単に体重計の数字を変える決断ではありません。
選手の戦い方、身体、対戦相手、そしてキャリアそのものを作り直す決断です。
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